鍼灸師の資格を取って働く方法|国家試験受験までの流れと費用の目安

古代中国で2000年以上も前に誕生したといわれる鍼(はり)と灸(きゅう)。
その鍼灸を用いて治療する「はり師」と「きゅう師」は、日本で数少ない東洋医学療法の国家資格です。
1998年以降、規制緩和で専門学校の数が増えたこともあり、資格取得や就業の環境が変わりましたが、毎年数千人の鍼灸師が誕生しています。
では、鍼灸師の国家資格を取得するにはどうすれば良いのでしょうか。
この記事は鍼灸師に興味がある人向けに、資格の取得方法や費用、働き方の現状についてご紹介します。


1)鍼灸師とは
2)はり師・きゅう師の資格を取る方法
3)資格取得後の働き先
4)活躍の場が広がる女性鍼灸師

鍼灸師とは

資格の話の前に、鍼灸師の仕事内容についてまとめておきます。鍼と灸の治療は具体的にどのように行われ、どんな効果があるのでしょうか

【はり師・きゅう師のこと】

鍼や灸を用いた治療を行う職業のことです。

鍼と灸は古代中国で誕生した歴史ある技術で、日本には6世紀ごろに知識が伝わり、鍼灸で患者を治療する職業も7〜8世紀ごろから存在していたといいます。

「はり師」として働くには「はり師」の資格が、「きゅう師」として働くには「きゅう師」の資格がそれぞれ必要で、どちらも国家資格です。

「はり師」「きゅう師」に求められる知識には共通する部分が多く、大半の資格所持者が両方の資格を取得しているため、どちらの国家資格も持っている人のことを「鍼灸師」と呼びます。

東洋医学療法の国家資格は、現在「はり師」「きゅう師」「あん摩マッサージ指圧師」の3つのみです。この3つの国家資格全てを持つ人は「三療師」と呼ばれます。


【主な仕事内容】

鍼または灸を使って人体のつぼ(経穴)に刺激を与えることによって、病気の治療や体の不調の改善、健康回復と増進を促します。

肩こりや腰痛に効くものというイメージがあるかもしれませんが、頭痛・不眠症・自律神経失調症といった神経系の疾患、ぜんそく、胃腸炎、さらに月経不順・不妊など婦人科系の疾患というように、幅広い症状に効果があります。

小さな子供の夜泣きや夜尿症の改善にも役立つといわれています。




長さ4〜8センチメートル程度のステンレス製の鍼をつぼに刺し、軽く回したり振動させたりして刺激します。

鍼の太さは直径0.17〜0.33ミリメートルと非常に細いため、施術中に痛みを感じることはありません。

筋肉のこりや血液の循環を改善するために、体に鍼を刺したまま微弱な電流を流すこともあります。




灸は「やいと」とも呼ばれ、もぐさというヨモギの葉の裏の綿毛を集めたものでできています。

つぼの上に灸を置いて火をつけ、熱による刺激を利用して治療します。

はり師・きゅう師の資格を取る方法

鍼灸師の資格を得るまでの道のりは長く、3年以上の勉強が必要です。働きながら資格の取得を検討している人には、時間と費用の面でややハードルがあるといえるでしょう

【国家試験を受験するには】

厚生労働省と文部科学省によって認定された、はり師・きゅう師を養成する専門学校または大学・短大で3年以上学び、卒業すると国家試験の受験資格を得ることができます。

専門学校の中には夜間部を設置しているところもあるので、社会人が働きながら資格取得を目指すことも可能です。

公益社団法人東洋療法学校協会のWebサイトで、協会に加盟している全国の専門学校一覧を見られます。

学校で勉強する科目は解剖学、生理学、リハビリテーション医学、公衆衛生学などの基礎医学や、東洋医学概論、経路経穴概論、針灸理論、針灸実技、診断学などの専門学です。

3年かけて「はり師」「きゅう師」に必要な基礎知識や技術を学び、臨床実習も行います。

スポーツによるけがの治療と予防を目的としたスポーツ鍼灸、アンチエイジングやダイエットを目的とした美容鍼灸など、特化した分野のカリキュラムを組む学校もあります。


【国家試験について】

試験は筆記試験のみで、毎年2月に実施されています。

受験手数料は1資格1万1600円で、両方受ける場合は2資格分の受験料が必要です。

双方の試験科目はほぼ共通していますが、「はり師」には「はり理論及び東洋医学臨床論」が、「きゅう師」には「きゅう理論及び東洋医学臨床論」があります。

同時に受験する場合には、申請すれば片方の試験で共通科目が免除されます。

この10年間の合格率はどちらも70〜80%前後となっています。


【資格取得までにかかる費用の目安】

専門学校

初年度は入学金のほかに、施設設備費などの費用を入学時に求められます。

入学金は学校によって十数万円〜数十万円と幅がありますが、その他の費用と合計した入学時納入金は、大体100万円前後です。

授業料も学校によって差がありますが、1年間で80万円前後〜130万円前後が一般的です。

3年間の授業料と入学時納入金を合計すると、約300万円〜400万円程度の費用が必要になります。

このほかにも教科書代、実習費用などで10万円〜30万円が追加でかかります。


大学の鍼灸師養成科

4年制の大学の場合は専門学校より1年多く通うことになるので、その分授業料や教科書代が多くかかります。

約700万円〜800万円程度の費用が必要と考えると良いでしょう。

社会人が資格取得を目指すには費用のハードルがやや高く感じられるかもしれませんが、多くの学校には奨学金制度や条件付きの入学金の減額や免除の制度が存在します。

また、厚生労働省に専門実践教育訓練給付金の対象として指定されている講座なら、社会人は最大144万円の給付金を受けられる可能性があるので、制度の利用や給付金の受給が可能かどうか調べてみましょう。

資格取得後の働き先

国家試験に合格したら、まず免許証発行の申請を行います。免許証を発行してもらうと「はり師」「きゅう師」として働くことができます。活躍の場にはどのような場所があるのか、ご紹介します

【主な働き先】


鍼灸治療院、接骨院(整骨院)

鍼灸師の就業先としても最もポピュラーな働き先です。

本来接骨院は骨折、脱臼、打撲、捻挫などの専門家である柔道整復師の職場ですが、肩こりや腰痛などに関しては鍼灸師の技術が必要とされるため、鍼灸師の活躍の場にもなっています。


病院など医療機関

内科や神経科のある病院では、鍼灸による治療を取り入れているところもあります。

症状の改善だけでなく、リハビリテーション支援にも効果的です。

また、終末期医療を行っている医療施設でも、痛みや症状の緩和に鍼灸が利用されています。


老人ホームや介護施設

腰痛や肩こりなどの治療はもちろんのこと、健康維持やリハビリテーションの面でも高齢者を支えることができる現場です。


スポーツ分野

スポーツジムやフィットネスクラブ内に併設された鍼灸接骨院なども、鍼灸師の就職先の一つになっています。

また、スポーツ選手にも体のケアに鍼灸治療を利用する人が多く、野球やサッカーをはじめ、水泳や陸上競技など、プロ、アマを問わない幅広い現場で鍼灸師の技術は求められています。

一流アスリートのトレーナーやプロのチームに所属する専属トレーナーの多くは、鍼灸師または柔道整復師の資格所持者です。


女性向け鍼灸治療院、美容鍼灸サロン

鍼灸治療院の中には婦人科系の疾患や子供向けの施術を専門に行うところもあります。

また、鍼灸の効果は美容分野でも注目を集めており、美容鍼灸サロンでは、肌質や顔のしわの改善、目元のくまの解消、リフトアップなどを目的とした施術を行っています。

こうした分野では、女性の鍼灸師も多く活躍しています。


独立開業

美容師などと同じように、鍼灸師も接骨院や鍼灸治療院で経験を積めば独立開業が可能です。

設備の広さや届け出など、規定をクリアすれば開業することができますが、経営していくにはある程度の経験値も必要になるでしょう。

そのため、鍼灸治療院や整骨院などの現場で経験を積んだ後で、鍼灸治療院を開設するのが一般的となっています。

活躍の場が広がる女性鍼灸師

「はり師」「きゅう師」の免許登録者は、それぞれ1993年には2000人前後だったのが、一時4500人以上に増えた後、2015年には約3800人になっています。

女性鍼灸師も活躍しており、婦人科系の疾患を対象とした鍼灸治療院や美容鍼灸サロンなども多くあります。

鍼灸師が活躍する場は今後も広がっていくと期待できるでしょう。

資格取得の費用はかかりますが、学校側も学費の減免制度や分納制度など、さまざまなサポートを用意しています。

そうした制度を利用すれば、費用の負担を抑えて資格を取得することも可能です。

働いていて難しいという人も、専門学校の夜間部などを調べてみてはいかがでしょうか。


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